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エノカマの旅の途中

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あやつられた龍馬~加治将一

最近、よくネット上で話題になる幕末維新に影で影響を及ぼしたとして、テレビでも取り上げられることもある
英国の諜報組織「フリーメーソン」の話です(アマゾン
ちょっと今更のタイミングでの感想ですが、買うまでもないかなと思っていたんですが、図書館に行った時に
あったので、ついでに読んできました。

ざっくりと言うと、幕末維新の最大の立役者・坂本龍馬の功績の数々は、すべて英国の指図(パークス
アーネスト・サトウ、グラバーら)によって行われたもので
最後の龍馬暗殺は、よく最近言われる「薩摩藩黒幕説」に英国が関与して、結果的に切り捨てられたもの。
僕からしたら、このブログで書いてきた主なものがほぼ否定される内容なんですが
読み物としては、よく文献も研究されていて(長州ファイブとの絡みは面白い)好意的なレビューも
散見されるのはわかるような気がします。
しかし、ちょっとでも信用されるのも怖いので何点か指摘しておきます・・・

「吉田東洋の暗殺」
なぜ、このような藩の最高実力者が、大胆にも殺されたのに武市らは見過ごされて藩政を握ったのか?
この件は「攘夷の決行」として、長州(長井雅楽の切腹)絡みとしての土佐勤王党の動きです。
保守的な東洋を暗殺した図式ではなく、むしろ開明的な藩父・山内容堂の推挙によっての開国論や殖産事業
(こちらは後藤象二郎が関わっていた)の東洋の施策は、右寄りの従来の保守層からも反発を買ってい
ました。その保守層と勤王党の合意の上での実行(容堂の縁筋もいた)であり、その直後の時勢では検挙
できる状況ではなかったわけです。そして、しばらく時間を置いた上での「勤王党の弾圧」となるのです。

「薩長同盟」
このあたりは最近の文献では「武力同盟」と言うより「長州救済」の面が強いとの解釈がされています。
本書では、いざ京都で締結となる場面でも薩摩が納得できず(メリットがない)グラバーの圧力+龍馬が
説得となっています。
勤王派の多かった対馬藩での構想から始まり、福岡藩における「第一次征長」後の五卿及び長州救済を
狙う動きに半ば、幕府を見限った西郷隆盛。
そこに土佐脱藩の五卿衛士・土方久元、土佐勤王党瓦解後に多くが長州へ走った浪士の代表格の
中岡慎太郎、そこに福岡藩士、西郷の親友の薩摩・吉井幸輔らが行動を始め
長州の経済的な支援要請に応えるべく、少し遅れて坂本龍馬が合流する流れがありました。
このあたりの動きはまったく無視されていて、ここの記述は説得力はありません・・・

「船中八策」
英国の入れ知恵とするには簡単ですが、当時の先覚者達の海外事情の認識は想像以上(議会制度なども)
従来のフランス一辺倒から、イギリスが世界の中心的になっているのも知っていました。
その先覚者(横井小楠、松平春嶽ら)とも知己の龍馬も当然、影響を受けているし、後藤象二郎にしても
十分知識は持っていました。ちょっと日本人をなめてもらっても困ります。。。
ここで本書に西周(にしあまね)の名が出てくるのは? 

「長崎・英国人殺傷事件」
「下関砲撃事件」「薩英戦争」で薩長を抑えたフリーメーソンが、土佐も落としたとされている事件です。
海援隊士が疑われて、その談判の場として高知に幕府高官とパークスら英国外交官がやってくることとなった。
これに関して中岡慎太郎は「御国は馬鹿正直の弊あり」と酷評し、土佐が犯人と認めたようなもので
上記の薩長の2件の時のように、事件は幕府に被せておけばよく、賠償金も必要ならば払わせればいい
と指摘しています。
ただし、本書で取り上げられる事柄としては、敢えて直接領国で薩長同様に、英国に接触したいとの意向
があったかもしれません。後藤はここで英国の諸制度について質問したおした上、煽てあげます。
そしてパークスは土佐に好印象を持って帰ります。収穫は十分あったでしょう・・・

「パークス・・・大政奉還論。サトウ・・・武力討幕論」
「大政奉還」「武力討幕」で論が割れていたころ、この二人はどちらとも接触していたとのことです。
しかし、その両方にらみは薩摩の施策にもあったので、それをアレンジした記述でしょう。
薩摩は久光が代表権を返上して、首相格が小松帯刀になっていました。
二つあった「薩土盟約」(中岡・板垣の武力行使論。坂本・後藤の大政奉還論)のどちらも小松は同席、承諾
していました(このあたりが薩摩が卑怯と言われる所以ですが)

そして、最後の暗殺・・・
解釈は「薩摩黒幕論」と取っていいんでしょうが、なんで吉井さんが悪者になってしまうの・・・
慎太郎とも龍馬とも多いに論じ、時にはハメを外して遊んだ盟友ですよ。。。
たぶん吉井幸輔って重要人物で、いろんなキーを握ってた人物ですがあまり語られることがないので
こんな推測にしたんだろうけど、なんか結末がお粗末に思えました・・・


とりあえず、いろいろ突っ込んでみました。
あくまでフィクションとして読んでほしいです!
Commented by ゆずぽん at 2009-04-23 11:24 x
なるほど・なるほど^^
まだ読んでおりませんが~~(汗
エノカマさんのポイントをおさえつつ 読んでみましょう。
龍馬があやつられた・・・とは
まぁ、幕末好きには興味のある一冊には違いないですが。。。
横井小楠・春嶽候・それに勝 海舟・大久保一翁の助言にも
影響 大きく受けてますよね。
日本のあの頃の諜報能力・吸収力・学習能力を侮ってはいけません。
Commented by enokama at 2009-04-23 19:47
>ゆずぽんさん
龍馬ファンが買ったとしたら、それはそれで内容は逆に「龍馬に失礼」
って感じるかも知れませんね。
歴史そこそこ知っている人なら、僕みたいにアラ探しみたいな(苦笑)
見方が逆に面白いかもしれません。
ちょっと、最後が雑な終わり方だったのが残念です。

本は中古がいっぱい転がってるし、図書館もたいがいあると思うんで
買うまでもないと思います!
by enokama | 2009-04-20 23:35 | 歴史全般 | Comments(2)