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エノカマの旅の途中

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「西郷どん」第二回

今回は華やかさのない地味な回で最近の大河に見られるような数字を求められるなら、一般人の評価ってどうなんだろうかなと思うんですが、やはり二十代に農政の実務をしていた経験ってのは重要ですからね。なかなか深いとこもあったんじゃないかと思います。



定免法と検見法については庄内藩の著書(絶版です)の時にだいぶ調べて書かせてもらったんですが、概ねの藩が享保の改革に見られるように江戸時代後半には検見から定免に移行していっている傾向が多いように思います。
定免はその通りで年貢が一定で豊作ならばいいんだけど、凶作の場合は不足分が翌年に繰り越されるもので、何年も続くと農民の窮乏ってのが酷くなり農民が多領に逃散する事態になり、その人口減少での生産力低下は自分たちの首を締めかねません。
そして対策として一時的な減免だったり検見取をしたり、庄内藩においては一切の累積した年貢をリセットすると言う思い切ったこともやっています。
また小作農になったとしても庄内の場合は大地主の本間家があったので、その小作農は厚く生活の保障がされ、その中で蓄えて自立する目途の立った者には自作農としての援助をすると言った政策も行っていました。
庄内藩は冷害も少なく、酒田港の上がりってのも大きくって恵まれた面もありましたが「富裕藩」と喧伝された幕末には農政改革の成果も出て「三方領地替え」の阻止や戊辰戦争での農兵の活躍と言った「士民一致」した動きにもつながっていきました。

定免がなぜ増えて行ったかと言うと、今回の調所にも言わせてたけど、どうしても農民が収穫量に手心を加えて(少なく見積もって)もらって役人にわいろを渡すことがどうしても起こってしまうし「予算」と言う概念も始まっていて、収入が読めるという面があったでしょう。役人の仕事量も検見だったら定免よりもかなり煩雑になってしまうでしょうしね。
「何年か一度口ばしの黄色いもんがやってくる」として、調所は吉之助に「やってみろ」って言いますが、やる気があって理想に燃えたものじゃないとできなかっただろうし、実際に理解のある上司もいたのです。
でもきっちりと調べていくと今回のように「隠し田」ってことも起こりうるでしょう。これは農民からしたら「生活防衛のために」よくあった事例でしょう。
なかなかこのシーンはよかった。

庄内藩の場合「三方領地替え」を阻止した一番の理由は、移封してくる藩主が新たに「検地」を行い、年貢を高めに打ち出してくるのではないかと言う農民たちの不安も大きいものでした。一定の長年の領主と農民の呼吸が合って「検地」も長年行われず、その間に農業技術も向上するだろうし余剰も出てくるだろうけど、そこへの新たな課税も行われなかった面もあって、新たな領主への危機感もあったのです。

藩への忠義はしっかりと年貢を徴収することでもあり、一方で農民の生活も保障しないと翌年以降の見通しも立ちません。庄屋層にもこのジレンマはあっただろうし、この実務方にあたった役人の苦労も常にあっただろう。


いよいよ薩摩のお家騒動ですが、昔は斉彬派が正義で久光派(お由羅)が悪いって普通に思ってましたが
どちらにも言い分あって、どのような藩政を行うのか財政をどう維持して行くのか、この派閥争いってのは一方的にどちらが悪いとも思えなくなってきてます。
阿部正弘も出してくるのかな。このあたりの展開も楽しみであります!

by enokama | 2018-01-15 22:38 | ドラマ感想 | Comments(0)