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エノカマの旅の途中

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パークス襲撃事件~刺客と断罪

その1から→)
二月末日(太陽暦・3月23日)英国公使一行は午後一時に御所へ向かい、宿舎の知恩院を出発していた。
パ―クスとミッドフォード、アーネスト・サトウらの公使館員、周辺には接待役である土佐の後藤象二郎、
その側近的存在である薩摩脱藩士・中井弘が英国警視と共に先頭に立っていた。
警護には英国連隊第二大隊分遣隊と肥後藩士300名が付いていた。

一行は知恩院の西側の参道ともなっている新橋通を西に進み、突きあたった縄手通(大和大路通)に出て右折し
北上、三条大橋東詰から鴨川を渡って御所へ向かい、天皇と謁見する予定だった。。
この襲撃事件が起きたのは、行列の先頭が縄手通に入り、最後の騎馬護衛兵が縄手通を曲がろうとした
瞬間であった。

縄手通の中井と朱雀が斬り合ったあたり(地図の赤印)
パークス襲撃事件~刺客と断罪_f0010195_22481538.jpg

二人の刺客が往来から躍り出て襲撃してきた。そして列に沿って走りながら、狂気の如く斬りまくったのだ。
次々と英国人護衛らを中心に十一名が瞬く間に負傷した。

刺客の一人、朱雀操には先頭にいた中井が馬を下り対峙した。狂気を帯びた男は相当手ごわい。
そして、斬り合ううちに中井は長い袴の裾が足に絡みついて、あお向けに倒れた。
そこへ刺客は刀を振るうが、辛うじて頭にかすり傷を受けたまでで済んだ。間一髪である。。。
反撃した中井は相手の胸を突き刺し、そこへ駆け付けた後藤が肩に一太刀を浴びせた。
そのひるんだ瞬間に起き上がった中井は朱雀の首を取り、討ち取ったのである。
その時、300人もいた肥後藩士は沈黙していたと言う。

行列の最後(新橋通と縄手通の角から縄手通方面・地図のオレンジ印)
パークス襲撃事件~刺客と断罪_f0010195_22485828.jpg

もう一人の刺客・三枝蓊は後列のパークスらの方向に向かって駆け込んでくる。
一人の英国歩兵警護隊士は頭部を斬られ重傷を負った。
そして、他の歩兵の小股にすくわれ倒れたところを銃剣で突き刺されたが、さらに民家の庭に逃げ込んだ時
放たれた拳銃の銃弾が下あごに当たり、ようやく取り押さえられた。
難を逃れた英国公使一行は一旦、宿舎の知恩院に引き返した。
負傷者はこの時期に京都に詰めていて、のち一連の戊辰戦争でも戦傷者に対し数々の外科手術を行い
命を救った英国人医師ウィリスも処置を行った。



ウィリスは三枝の応急処置も行い、中井らに取り調べられ監禁した。
この処刑前の三枝と討ち取られた朱雀の首の写真が残されている。

伊達宗城、小松帯刀、後藤、五代ら外国掛は協議の上で刺客二人の梟首を決定する。
一連の国際問題(神戸事件・堺事件)もあって、実現に困難を窮めた「天皇への謁見」がまたしても
妨害されたことで極刑を逃れることはできず、今後はこのような外国人への「攘夷行動」は一切認めないと
国内外に知らしめる断固たる姿勢を示したとも言えよう。
幾人の血も流れたが、それらの犠牲を以て「新政府の正当性」を諸外国に認めさせたのである。
粟田口で三枝は斬首され、朱雀の首とともに三日三晩、さらされた。
靖国神社には祀られることはないが、墓は霊山墓地にある(→こちら

パークスの下には伊達宗城や松平春嶽が天皇の憂慮を伝え、謁見は三月三日に改めて行われた。
随員は負傷者が多かったため人数は減ったが、厳重な警戒が行われた。

また二条城に詰めていた元陸援隊士の川上邦之助、松林織之助、大村貞助にも累が及び
流罪となって京都を追われた。

五代は一連の事件解決いずれにもに関わり、この後は大坂に赴任することとなる。
ここから「大阪」との縁が生まれていくのであった。


(五代友厚関連)
五代友厚連載→その1その2その3その4その5その6その7その8その9
神戸事件→その1その2その3  
堺事件 その1その2その3その4
パークス襲撃事件→その1その2
Commented by heitaroh at 2016-11-07 18:47
はじめまして。
この事件、あまり資料らしい資料がなく、これまであまりよくわからなかったのですが、ここまで詳しく書いてあることに感服しました。
特に、「英国歩兵警護隊士は頭部を斬られ」とか「ウィリスは三枝の応急処置も行い」などという記述は初めて知ったのですが、もしよろしければ出典元を教えていただけませんでしょうか?
Commented by enokama at 2017-02-09 17:46
> heitarohさん
wikipediaにもないですからね。自分で書いてしまおうと書いてみました。(検索で出てくるもう一つのブログ記事は知人です) 主な文献は「一外交官の見た明治維新」下巻です。後は五代友厚関連です。
by enokama | 2016-01-12 18:49 | 歴史連載 | Comments(2)