エノカマの旅の途中

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近江屋事件の検証~磯田道史「龍馬史」

北川村の中岡慎太郎先生顕彰会から便りが届きました!

今年の北川村での墓前祭は命日(11月17日)と違って、少し早く10月28日(日)に行われます。
17日にも墓前には祭壇がもうけられます。
京都の墓前祭は11月15日(今年は木曜日)で例年通り、北川村の軍鶏ナベがふるまわれます。

また「顕彰会便り」の記事では例のBSの番組(→こちらこちらこちら)への異議が書かれています。
番組の流れを唐突に断ち切るような、ラストでの強引な加治将一の結論(おそらく本の宣伝のため)は
取材にも協力した村民のみなさん、VTR制作で村での十分な考証を経た現地ロケスタッフとの信頼も
壊してしまったかと想像されます。
おそらく厳重な抗議もされたでしょうが、具体的な謝罪も加治本人からされるべきです。
「フィクション作家」の仮説だけで語るような解説者を起用したTBSも「ドキュメンタリー」のカテゴリとしたら
やってはならないことです。
おそらくこの番組自体が「総集編」の連続となっているので、もう今月には打ち切りかと思われます。
TBSは地上波の歴史番組や、お得意の他局パクリ番組群もこの秋で多くが終了となります。
いつぞやの「会津若松城」騒動でも物議を醸しだしましたが
もうこの局は見るべきものはありません、理性のかけらもテレビマンのプライドもないのでしょう。




一度、しっかりとした加治の本の誤りを指摘をしておかなくてはならないと思うのですが
(くぐってもフィクションなのに「本当だ」と思っている読者が非常に多いため)
まず最初にオーソドックスな検証本として、磯田道史氏「龍馬史」を紹介します。

内容としては特に奇を当てらったような解釈もないし「無難な内容」と思いますが
アマゾンのレビューを見てても、「中級向け」としての総じて妥当なものです。
この方は研究者であり、作家ではないので龍馬暗殺に関する「推理や新説」などを求める人は
お読みにならない方がいい。

まあ歴史通を自任している方には物足らないし
(この本に限らず)全般的な幕末史を、龍馬(の行動を中心とした)思想で語るのは無理がある。
やはり最後の将軍となる慶喜と、小松を中心とした薩摩の京都朝廷(孝明天皇ー中川宮)における
動向を探るのが王道だと思う。

気になったのは龍馬(と勝)の「海軍」創設が「大政奉還」や「薩長同盟」よりも
最大の功績と語られていること。
長崎海軍伝習所→築地軍艦操練所のことがまったく触れられず
勝が「海軍創設」を将軍・家茂に訴え、神戸の操練所が作られたってのは
すでに海軍創設に向けて、幕府は着手してるんだから(よくありがちだけど)間違い。
しかも榎本らを「軍艦を運用する技術に問題があった」と、戊辰戦争時に次々と船を失った例で言い切り
形すらなく比較対象にならないだろう「坂本海軍」(?)を持ち上げる書き方は、よく意味がわからない。
まあ磯田氏はすでに語られ尽くしている人物よりも、新しく史料を掘り下げて発表するスタイルが
一番持ち味が出る方なんだろうと思うけど。
「薩長同盟」は薩摩主導が明らかだし「大政奉還」も平和論とかの問題ではなくって
龍馬は「戦争にも備えていた」のは数々の日記でも明らかで、このあたりは研究者の目線で
当たり前のことを書かれている。

話は長くなりましたが、今からが本題。
薩土芸の多少のスタンスの違いはありながらの「大政奉還」へ向けた共同歩調(→こちら
暗殺直前、龍馬の越前訪問での三岡八郎(由利公正)との対談の裏側からの
新政府における経済政策構想はなるほどと思いました。

そして暗殺の要因は、翻意にしていた幕府大目付・永井尚志(大政奉還建白提出を土佐の後藤に
急かせたこともあった)に再三、面会していたことで
その要件の一つに新選組に捕らえられていた、宮川助五郎の釈放問題もあった可能性があります。
そしてなんと、その永井の寓居の向い側に佐々木只三郎の下宿(松林寺)があった・・・

当時も坂本龍馬はちょっとした有名人であり、この時期の入京の際も「300人の兵」を引き連れてくると言う
風聞があったことも知られた話です。
それと僕も度々書いてきたことですが「大政奉還」に反対する強硬勢力が会桑にいたことは、結構な数の
書簡にも残っていることですし、さすが永井には直言できないものの
そこに頻繁に出入りした姿を見られ、煽ってるような態度に見えるとなると標的にされる可能性も十分ある・・・

ひねくったような陰謀論でこの事件(近江屋事件)を語る方も多いですが
実はこの手の事件は単純なものだったと言うことも多いものです。
適度に実証史料も使われて、推論にしても無理がないので、前半に書いた点を除けば
いい本だと思います!
まあ研究者の書かれるものだと、これ以上に飛躍したような異論ってのは出されないですし。

作家さんでこの本を痛烈に批判された記事も、くぐったらあったんですが
根本的に好きに書いていいフィクション作家との、性質の違いってのはあるだろうし
別に磯田氏は考えも押し付けていないし、人それぞれです。
変な中傷する人もそのへんはわかってほしいです!


次回はいつになるかはわかりませんが
加治将一をブッタ斬りたいと思います。。。
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by enokama | 2012-09-06 23:35 | 歴史連載 | Comments(0)