エノカマの旅の途中

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筑後川昇開橋と佐野常民記念館

「佐野常民記念館」のある川副町(かわぞえまち)へは
佐賀市内から約1時間おきに出ている、佐賀市営バスで30分ほどかかります。
かつては単独の自治体で、今は佐賀市に合併されてますが以前から市営バスが
市域を超えてあったようです。

このあたりは筑後川の河口に近く、古来から筑後平野の産業を支える水運が盛んな地域でした。
そして有明海に入ってきた海船は、若津港(福岡県大川市)まで筑後川をさかのぼって入ってきて
そこからは川船に接続するようになっていました。
流域各地の米や日田の木材も筑後川を使い運ばれ、若津港付近の大川周辺では日田杉を使った
家具製造が盛んになって、日本でも有数の家具産地となっていたのです。

赤印の位置の大川側が若津港で、昭和の初めごろまでは船の出入りが盛んにありました。
このころ(昭和10年開通)佐賀~大川~柳川~瀬高を結ぶ、国鉄佐賀線の建設が決まり
この若津付近で架橋されることとなりましたが、船舶の運航と筑後川の干満差が激しいこともあって
架橋計画も大型蒸気船舶の運航を妨げないような工夫が必要とされました。




筑後川昇開橋
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鉄橋の橋脚間の一つの桁が、その両端の鉄塔のワイヤー操作によって
高く持ち上げられて船舶の通行を妨げない仕掛け「昇開橋」として、この架橋が完成しました。
船舶の出入りの方が列車の本数よりも圧倒的に多かったので、常に橋桁が上った状態が多かったようです。
佐賀線は昭和62年に廃止されて、今は橋桁が上げられた状態で「近代産業遺産」(機械遺産)
国の重要文化財として、現在も保存されています。
保存決定後、昇開も一日に数度行われていたようですが、滑車の不具合が見つかり
現在は中止されていて、佐賀⇔大川の間をこの橋を使った通り抜けはできなくなっています。
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地図の青印が、この橋の下流がら分かれた早津江川沿いにある「佐野常民記念館」(→HP)となります。
昇開橋で一旦降りて、バスが前述のように少ないので、早津江まで歩いて行ったんですが
40分ぐらいかかりました。。。(苦笑)
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三階建てで、二階部分が展示スペースで有料となっています。
佐野常民はこの早津江で生まれ、藩医・佐野常徴の養子に出され医師を志すようになります。
緒方洪庵の大坂・適塾、華岡青洲系の外科術塾で紀伊の春林軒(大坂中之島・合水堂の本校にあたる)
(※追記 おそらく、名簿には春林軒とあるが合水堂である可能性もある→こちら
佐賀出身で高名な蘭学医であった伊東玄外の江戸・象先堂と最高峰の医塾に学び
佐賀に戻ってからは製煉方となり、佐賀藩の近代化に勤めます(→こちら
安政2~4年にかけて幕府の長崎海軍伝習所にも派遣され、安政5年(1858)になって藩は
御船手稽古所を創設し、この三重津の地に海軍所が作られることとなります。
この地には製罐所が作られ、本格的なドックで造船も開始されて、幕府からは蒸気船の受注を受けるまでとなり
佐賀は急速な近代化・工業化を進め、その人材をもって明治新政府でも、その存在感を示すようになるのです。

3階テラスからの眺めです
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船のあるあたりに三重津海軍所のドックがありました。
年代的に築地の幕府軍艦操練所(→こちら)よりも早く、規模も屈指のものではなかったかと言うことで
「世界遺産」の運動もされています(だから「日本海軍発祥の地」の一つとも言える)
ちなみに対岸は柳川領(立花藩)ですが、も一つ仲は悪かったと言うことです。
その偉容は柳川藩からもよく見えたことですし、ある意味すごいのではと(笑)
製罐所、ドックの他に兵舎、兵学校もありました。
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往時は13艘の艦船が並び、偉容を誇りましたが
現在は水量も減って(上流に多くの堰ができたため)川幅もかなり狭くなったようです。
一方の水運でもつながった久留米藩とは交流が比較的あって、からくりで有名な田中久重らの人材も
一時期、佐賀で受け入れて近代化に貢献しています。

アポなしで行きましたが、僕が適塾記念会の会員だと言うことで通していただき
学芸員さんにいろいろ丁寧に説明していただきました。ありがとうございました!

三重津海軍所関連の石碑
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生誕地(記念館とバス停の中間あたり)
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早津江バス停(お互いの終点)
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佐賀から佐賀市営バス。西鉄柳川から西鉄バス。
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by enokama | 2012-06-09 16:24 | 歴史連載 | Comments(0)