「龍馬伝」第四十二回~いろは丸事件・紀州は実は悪くない!
長崎で揃った龍馬・後藤・弥太郎の「チーム土佐」が
天下の御三家・紀州藩に立ち向かい、賠償金をせしめた痛快な話!
さすがに元々から伝わる話で十分、ドラマの要素があるので
あまりいらない脚色がなく、史実の引用も的確だったので(他の回に比べてだけど)
今回はいつもと違って見やすい話でした。
(最後の15分は不要だけど)
でも一般的に物語や劇中ではどうしても「一方的に紀州藩は悪玉」となってしまうんで
気の毒なんですけど(まあ、そうすることによってわかりやすくなるんだろうけど)
巷にあふれる龍馬本の解釈がいくらでもあり、一概には言えないんですが
僕が見たり、人ずてに聞いた話では「明らかにいろは丸に非がある」ようなんです。
まあ、そんな条件から完全勝訴に持って行ったんだから
それはそれで痛快な話であって「新しい龍馬像」を描くのなら
その説を使っても面白かったと思うんだけどね…
まず、紀州藩「明光丸」(実はこの船もグラバーから買っている!)の航海術が稚劣だったと言うことはなく
船長の高柳楠之助は航海術・蘭学を修め、英文の素養もあって自ら翻訳した(「南紀徳川史」に訳文あり)
今回の事故のレポートを持って、長崎駐留・英国艦長らのアドバイス(紀州藩側有利の感触も得ていた)も受けていたほどでした。
また大藩でもあり、しっかりした船員(塩飽諸島の航海術熟練者や勝海舟門下生と言った)スタッフで航行もしていたのです。
最初の談判は、龍馬と高柳との交渉でしたが(本編では仕入手代と言う職の、岡本覚十郎が表に立ってました)
のちの高柳の報告にもあるように、お互い「海の男」としての比較的冷静に認め合った面もあって、いがみ合うような場面は意外になかったようです。
また「万国公法」を持って進めるよう言い出したのは、むしろ高柳でお互いに理詰めで高度な主張を繰り返しましたが、どちらが決定的に悪いと言う確証もなく平行線をたどりました。
(「万国公法」は幕府の軍艦操練所でも必須だったはずで、当時の常識だったと思います)
その勝敗が決するのは談判が、その上役の紀州藩の勘定奉行・茂田一次郎と土佐藩出崎官・後藤象二郎に移ってからで
いろいろあったようですが、短く言うと「喧嘩のうまい者が勝ち」でした(笑)
このあたりは、後藤の持って生まれた天性のもので、のちに外国人と対峙することがあっても
一歩も臆することなく、引きませんでしたからね。
せっかく、この後藤様と中尾彬で役者が揃ったんだから、直接対決をさせてほしかったな…
押されっぱなしになった紀州が「御三家の威光」で、長崎奉行所を抱きかかえようとした話が
伝えられるのもこのころでしょうか。
最後の決め手として、第三者の仲裁を求めます。
その人物は薩摩藩きっての海軍通で、長崎でも実力者だった五代才助(友厚)
この大河では、薩摩色がかなり薄められていますんで出ていませんが
小松帯刀とも近い関係もあって、龍馬と親しい仲でした。
今回のいろは丸の運航話も、もともとは五代からの紹介でした。
これで勝敗は完全に決したわけです。
まあ、このあたりの細かい下りは諸説ありますので
違った説も出てくるし、岩崎弥太郎の賠償金の吹っかけ方や
(今回の金が絡んで必死な香川さんの演技はよかったな 笑)
積荷に関しても研究は進んでいると思うんで
また、新たな発見も出てくるかもしれませんね…